なぜ2020年7月は一つも台風がなかったのか

史上初だった「台風のない七月」

基本的な話、熱帯擾乱(台風や熱帯低気圧)は北半球では反時計回り、南半球では時計回りの渦をなす。

だから、赤道を超えて移動できる台風はない。

赤道は地球の自転の遠心力が一番かかっている場所(体重も赤道直下で測ると一円玉一枚分軽くなるとか)。

この遠心力が南北で渦の回転方向を違える「コリオリの力」となる。ただ、赤道上(緯度南北5度くらい)では台風が生まれない。

台風が生まれやすい場所は赤道から少し北、フィリピンあたりで、ここは貿易風(東風)が吹いている場所。2020年7月も海水温が上がり、熱低の元となる積乱雲はポツポツできたのはいつも通り。

ここに回転を加える力(東風の貿易風と逆風=西風)が加わらなかった。

きっかけの一つが夏場に吹く季節風インドモンスーン(南西風)だが2020年7月はインドモンスーンが赤道付近から北上してこなかった。

インドモンスーン(西寄りの風)と貿易風(東寄りの風)のぶつかる場所を「モンスーントラフ」と呼ぶ。

北緯20度辺りにモンスーントラフがあるとぶつかった風が回転成分を持ち熱帯低気圧の渦になる。

モンスーントラフが台風のできない赤道付近にあった2020年7月は火薬はあるが導火線のない状態だった。

このインドモンスーンの振る舞いの原因は21世紀になってもまだわからない。